情操教育‪α‬

忘却炉に送るまえに

6月 散歩拾得物

○散歩のときに心にとまった風景やオブジェクトを集め、記録する

○いくつ拾ってもいいし、ひとつも拾わなくてもいい

○無機物も生き物も情景も香りも行為も並列に扱う

○必要な短さ、必要な長さで記録する

○散歩中メモはせず、持ち帰ってから記録する

 

時間:19時ごろ

場所:荒川

まるい月

雨上がりの濃密な青のにおいと透明なつめたさ

 

時間:昼どき

場所:南千住

気持ちわるいぐらいデカい紫陽花

やよい軒アカモクメニュー

変なラーメン屋にできた行列

ピン!とした細い犬に与えられたチーズ

祭り男たちの「お疲れ様でぃす」

自転車かごに干されたもじゃもじゃのマット

古い家の2階の窓から流れるガサガサの音質の競馬中継

階段を縦に割る赤と青の境界線を歩くこと

 

場所:近所の川辺

きいろい月の雲隠れ

白いタイル壁の照り

その中央の四角い明かり

にせものの炎のガーデンライト

疑似三日月

雲の破れ目

夜風に運ばれてやってきた香水のかおり、桃と栗のような

夜のためだけにあるような黒い車たちのかがやき

排水溝の裂け目から顔を出した草

身長と同じ値のレギュラーガソリンの値段

お兄さんの背中のでっかいハンモックみたいな鞄

灯りのついた26個の窓

 

 

時間:22時頃

場所:近所の住宅街

もこもこのショートパンツ

電柱の根元に集められた尖った小石たち

卸売センターの車が0台の駐車場

薄茶けたドコモショップの看板

閉店後にとりのこされた食堂のにおい

道路と斜めに交わる高架

その高架沿いに不気味なほど直線に並ぶ白いあかり

 

時間:19時半ごろ

場所:近所の河川敷

向こう岸のビルを覆う低く厚く暗い雲

その雲の向こうで時折天啓を受けたように白く輝く塔の先端

心臓と脚に心地よい負荷を与えるゆるやかな坂(5往復ぐらいした)

煮物の匂いの古いアパート