情操教育‪α‬

忘却炉に送るまえに

10月 散歩拾得物

散歩のときに心にとまった風景やオブジェクトを集め、記録する

○いくつ拾ってもいいし、ひとつも拾わなくてもいい

○無機物も生き物も情景も香りも行為も並列に扱う

○必要な短さ、必要な長さで記録する

○散歩中メモはせず、持ち帰ってから記録する

 

時間:午後

場所:犬がきめた散歩コース

・犬に尿をかけられたオレンジ色の花

・朽ちつつある母校

・犬の頭に散る実

・倍ほどの高さに伸びた低木の垣根

・供物のように横たえられた私の好きな花、ピンク色の螺旋塔

 

時間:17時ごろ

場所:帰路

・灰色でもあり紫色でもある空

・閉まるシャッターの隙間、最後の望みみたいな光の筋

・お夕飯の匂いとアップライトピアノの音

 

時間:20時ごろ

場所:近所

・転がる緑色のバケツ

・濃青の空と切った爪のような月のオレンジ色

・フライパンに炒飯の焦げつく匂い

・コインランドリーの泡色の匂い

 

時間:16時ごろ

場所:帰路

・枝からゆっくりと着地する鳩

・しっぽありコーギーのカフェオレ色の先っぽ

 

時間:18時ごろ

場所:上野駅

・ツォンヨウピン

・1段ごとに白状に突かれるハイヒール

 

時間:20時ごろ

場所:川辺

・軒先の「ご自由にどうぞ」を押さえている大きな石

・こんなところにあった覚えのない電柱

・透明度のたかい硬質な紺の空

・黄色いランプシェード形の花の蜂蜜のかおり

・背の高い草が放射する青臭い冷気

・走り込みグループの制汗剤の風

 

時間:明け方

場所:近所

・透明な空に一等輝く明けの明星

・幸先のよい気がする朝焼け