情操教育‪α‬

忘却炉に送るまえに

0403

農作業の手伝いがあったから、今日も早起きだった。稲の苗箱に種をまく作業。ベルトの上に苗箱を乗せると、水をかぶり、種をびっしり並べ、土で覆われて出てくる。苗箱を設置したり、完成した苗箱を取り出して並べたりする作業は人間が分業してやらなくてはならない。腰の痛くなる作業だった。わたしたちの動きはすべて、ベルトコンベアのテンポとリズムに統制されていた。

祖父が指揮をとり、わたしと母と叔母が交代で位置について作業をした。弟は部活、父も叔父も仕事に出てしまったから、家に残っている女たちで作業をしなければならなかった。母は効率がよくなる方法を編み出しては祖父に提案し、叔母も勤勉にはたらき、わたしも休憩の時間を削って作業をすすめたので、まる2日かかるはずだった作業がものの半日で終わってしまった。こんなに朝から仕事をしたのに午後の時間がまだまだあるなんて嘘みたいだった、早起きをしないことは、もしかしたらものすごく損なのかもしれない。しかし外での作業をに慣れていないからからか、家に入って腹を満たした瞬間ものすごく頭が痛く眠くなった。

だらだらして、年金免除のはがきを書いて、買い物に出かけた。あまりにも冬服しかないのであたらしい服を買い足した。試着室といえばいつもじぶんの脚の奇怪なほどの太さに絶望する場所だったけど、筋トレをはじめたおかげでそれがなかった、そのことが何より嬉しかった。

服を買うと、背筋が伸びる。お金をかけるからこそ、無料でできる努力の部分でいかに底上げするか、という発想に到るというもの。

家に帰り、母と酒を飲みながら昔のことについてなど夜更までたくさん語り合った。新しいことが始まる前に、ルーツを思い出しておくことは大切。